ベトナムのカフェメニューで最近いちばんよく見かける新顔が、塩コーヒー(カフェムオイ)です。濃いフィンドリップコーヒーに練乳、その上に塩をきかせたホイップクリーム。奇妙な組み合わせに聞こえますが、一口飲めば納得できます。2010年頃にフエの小さなカフェで生まれたこの一杯はCNNに紹介されて世界へ広がり、今やベトナム旅行の必須ミッションになりました。

塩コーヒーの誕生:フエの小さなカフェ
物語はベトナム中部の古都フエから始まります。2010年頃、「Cà Phê Muối」、日本語に直せばそのまま「塩コーヒー」という名前のカフェがオープンしました。当時フエのカフェで広く使われていたロブスタ豆の強い苦味を、どうすればまろやかに出せるか。その悩みの末にたどり着いた答えが塩でした。塩が苦味を抑えて甘みを引き立てるという、料理の世界では昔ながらの原理を、コーヒーに応用したわけです。
カフェの名前はそのままメニュー名になり、評判は街を越えて広がりました。CNNをはじめとする海外メディアが取り上げたことでグローバルなトレンドになり、数年先にハノイのエッグコーヒーが歩んだ道をそのままたどって、全国区の流行になりました。
味の構造:甘じょっぱさのコーヒー版
塩コーヒーは、層で飲むドリンクです。いちばん下には甘い練乳、その上にフィンフィルターからぽたぽたと落ちた濃いコーヒー、いちばん上には塩をひとつまみ加えて泡立てたクリームが座ります。
「コーヒーに塩?」と身構える必要はありません。最初の一口は、混ぜずにそのまま。ほんのり塩気のきいたクリーミーなクリームが先に来て、その後ろから苦いコーヒーが突き抜けてきます。次に全体をよく混ぜて飲むと、甘み、塩気、苦味がひとつに溶け合った、まったく別の「二杯目」に変わります。塩が甘みを増幅させる甘じょっぱさの原理のおかげで、実際に飲むとしょっぱさはほとんど感じません。甘いだけの練乳コーヒーが少し重かった人ほど、このバランスにハマります。

どこで飲むか
聖地はフエです。 元祖のカフェは今も営業を続けていて、街全体が塩コーヒーのふるさとなので、どのカフェに入ってもレベルの高い一杯に出会えます。ダナンから車で2時間ほどの距離なので、ダナン旅行者がフエ日帰り観光に塩コーヒーの聖地巡礼を組み込むのは、もはや定番のコースです。
フエまで行けなくても大丈夫です。 今では全国に広がった流行なので、ダナンやニャチャン、ホーチミン、ハノイのカフェメニューでも cà phê muối の文字は難なく見つかります。観光客向けの店より、地元の人でにぎわう街角のカフェのほうが、濃いめの一杯に出会える確率が高めです。
注文の仕方と飲み方
注文は簡単です。メニューの cà phê muối(カフェムオイ)を指させば、それで終わり。muối が「塩」という意味です。英語が通じなくても指差しだけで伝わるのが、メニュー注文の良いところです。暑い国らしくアイスが主流で、ホットにするとクリームの質感をより濃厚に楽しめます。
飲む順番は、現地流をまねしてみてください。混ぜる前に一口、混ぜた後にもう一口。同じグラスで二種類のドリンクを味わうようなものです。フィンフィルターごと出てくる店なら、コーヒーが落ちきるまで待つ数分間も、ベトナムのコーヒー文化の一部として楽しみましょう。

ベトナムコーヒー巡りへ広げる
塩コーヒーを入り口に、ベトナムコーヒーの世界を巡るのも旅の立派な軸になります。ハノイが元祖のエッグコーヒーは、卵黄クリームのカスタードのような甘さ。ココナッツミルクをフローズン状にしてのせるココナッツコーヒーは、南国らしい清涼感。そしてクラシックな練乳コーヒーのカフェスアダーは、すべての基本形です。街ごとに看板選手が違うので、旅程に一日一杯ずつコーヒーを挟むだけで、自然とおいしいグルメツアーが完成します。
カフェで過ごすベトナムの午後
ベトナムのカフェ文化の美徳は、そのゆったり感にあります。道端の低い椅子に腰かけて、バイクの波を眺めながらコーヒーが落ちるのを待つ。その時間そのものが観光です。塩コーヒーが一杯あれば蒸し暑い午後の句読点として十分ですし、値段も手頃なので、1日に2、3回カフェをはしごする旅行者も珍しくありません。ノートを1冊持って行けば、旅日記が自然と進んでしまう環境です。

ひと目でわかるまとめ
- 何か: フィンコーヒー+練乳+塩クリームの層ドリンク、カフェムオイ(cà phê muối)
- 元祖: フエの「Cà Phê Muối」というカフェ(2010年頃)、CNN報道で世界的流行に
- どこで: 聖地はフエ、今はダナン・ニャチャン・ホーチミンなど全国のカフェで
- 注文: メニューの cà phê muối を指す、アイス/ホットを選ぶ
- 飲み方: 混ぜる前に一口、混ぜた後にもう一口
- 拡張: エッグコーヒー(ハノイ)・ココナッツコーヒー・カフェスアダーでコーヒー巡り
ベトナムの旅程にはこう組み込む
塩コーヒーは、旅程を圧迫しないミッションです。Tripop(トリポップ)に「ダナン3泊5日を組んで」と頼んで旅程を受け取ったら、午後の予定の合間のカフェタイムに塩コーヒーを差し込むだけ。ダナンならダナン3泊5日の旅程、ニャチャンならニャチャン3泊5日の旅程の流れに、カフェを1軒のせれば十分です。コーヒー代は外貨の家計簿にドンのまま記録すれば為替込みで精算でき、旅程はオフラインでも開けます。
画像: Pexels (Nikita Belokhonov:フィンフィルター、Nguyễn Tiến Thịnh:アイスフィンとアイスコーヒー、lhthoai:ドリップとバインミー)、Pexels License.